「31st Xmas」


24日は休みどころではなかった。だから会うのは25日にしたっていうのに・・・。
その仕事に追われてたら、25日も過ぎてしまった。
待ち合わせてた教会の前、こんな真夜中に待っててくれるわけないよね。
それにしてもなんで教会なんだろう?
なんだか昔のドラマみたい・・・。
教会に着いたヒロインは、おいてあるはずの指輪がないのに気づいて、愕然としたんだった。

静まり返った街の中に、ぽつんと佇む教会は厳かすぎる。
そして私も・・・やっぱりいないってヒロインのように肩を落とす、きっと。
こんな時に限って、どうしてケータイ電池切れになるのよ?!

24歳をあっという間に過ごしたけど、25過ぎたらクリスマスケーキも売れなくなるって誰が決めたの?
お肌なんか曲がり角とっくに曲がっちゃったけどさ・・・素肌にはまだ自信あるんだからね!

無我夢中で仕事してるうち、大晦日の31歳まで来てしまっていた。
そんな私でも付き合ってくれてる彼がいるっていうのに・・・しかも年下の。
やっぱり仕事がいちばんの恋人になってしまった女の馴れの果て?

帰ろうかな・・・。
教会のステンドグラスに背を向けて石段を降りようとすると、辺りが急に明るくなった。
振り返ると・・・イルミネーションライトが点灯している。
それは教会の屋根から斜めに垂れ下がり、まるでツリーを形作っているようだった。
そしてそのツリーのてっぺんには、屋根の十字架がちょうど上手い具合に乗っていた。
いったい誰が?まさか・・・?

ギギギと重いドアが開き、彼が姿を現した。

「Merry Christmas!!」
「ったくなによぉ!なんで早く出てきてくれないのよ?」
 遅れておきながら、こんな言い草もないけど。 
「連絡取れなくなってんだもんなー?」
「・・・ごめん・・・電池切れで・・・」
「充電くらいしとけよ!いくら仕事忙しいからってさぁ」
「ごめんね・・・。それよりこれ・・・どうしたの?」
イルミネーションを指差す私。
「・・・おまえのために決まってんじゃん!」
「ホント?」
「ああ、なかなかいいだろ?」
「すごい・・・」
「ここの神父さん、知り合いでさ、飾り付けさせてもらえるよう頼んだんだ」
「私のために・・?!ありがとう・・・!!」

彼の気持ちに瞳が潤む。

「でもどうして教会にしたの?待ち合わせ」
「そりゃーさー・・・ロマンチックだろ?愛を誓うのには」
「・・・誓うって・・・」
「そろそろ、なぁ?」
「え?!」

どこかで彼との結婚の青写真を描くこと、あきらめてた。
自分が年上だということが、心の底にどうしてもひっかかっていたのだ。

「私もう、大晦日の31歳だしね・・・」
「31歳が大晦日だって?だったら元旦になったら1に戻るじゃん?
 1からスタートすればいいんじゃないの?」
「え・・・?」

彼の言葉にはっとした。私、年齢を気にしすぎてたかもしれない。

「オレから見たら、まるで年下だけどなー?」
「ずいぶんなこと言ってくれちゃってぇっ!!」

私は彼のおでこを軽くでこぴんした。

新しい年はめぐってくる。31歳にも32歳にも。
来年の目標は決まった。

「『きれいで賢い女』を目指すからね、絶対!!」
いきなり言い出す私に、彼はふふっと笑う。
「そう?じゃぁいい女ぶり、たーっぷり見せてもらうね?一生かけて」
「・・・ちゃんと見ててね?」
笑いながら私はちょっぴり泣いた。

人生31回目のクリスマス、彼との3回目のクリスマス。
そして何回目かもうわからないけど、キスを交わす、教会の前。

1からのスタートは、彼と始められるかもしれないね。





     
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