「きみとヤツと僕の夏」



グランドは、ペペロンチーノのパスタまで茹で上がりそうな熱が立ち込めてる。

「こんな中で、試合なんかムリだよ」ってマネージャーが言うのに、僕は曲げなかった。

他のメンバーにも相手チームにもひどく気の毒だけど・・・。


今日の試合には負けられない。絶対負けたくない。ヤツと大事なカケをしてるんだ。


マウンドの上のヤツは、僕と違ってえらくスタイリッシュで、帽子からはみ出した

髪の毛まで、カッコよく見える。


ヤツには負けらんねぇ!!



ベンチでこぶしを握りしめて座ってた、僕のほほに触れた指。

振り返るとマネージャーがいて、僕のほほをつねった。

「ほら、なんでそんなに力んでんの?きみらしくないよ?」

年上だからってお姉さんぶんなよ、って思ったけど、僕はマネージャーに弱い。


ヤツとカケに出てるのだって・・・。



僕は立ち上がって、バッターボックスに立った。

「力抜いて行けぇ!!」

きみの高い声がベンチから聴こえた。


「おっしゃー!来い!!」

カラ元気のような僕の声。でも僕は思いっきりバットを振った。


白球は弧を描いて、青い空めがけて飛んでいった。


「やったぁー!!一発逆転ホームラン!!」

きみの声が高い空に響いた。振り返ったら、きみは少女のような笑顔で笑っていた。

そんなきみの笑顔が、僕はこの上なく大好きだから。

ヤツから点を奪った僕は、きみを誘って秋祭りに行くんだ。



少しだけ暮れ始めた空が、どことなく秋めいてきた。草むらからは虫の声がする。





BGM : ポルノグラフィティアルバム「ポルノグラフィティ」より「ベアーズ」