| 「明良へ」 ものすごい速さで 雲が駆け抜けてゆく 台風が運んできた風のおまけだろう 私の心も おんなじように奥底は風が吹きさらしだった 二人で 強い風の吹く河原を歩いていた 明良がふと 口笛を吹いた そのメロディーが心にずっと染み入ってきて 私は歩みを止めた 私が立ち止まるから 「梨香?」と明良が振り返る 涙が止まらなかった 「梨香・・・」と再び明良が私の名を呼んだ 私は駈け出して 明良の背中に思い切り抱きついた 歩いてく 歩いてく 明良と一緒に歩いてく 口笛を吹く明良の顔を見上げて 私はぐしゃぐしゃになった顔で 笑った |